「うちは毎日塩素消毒しているから、レジオネラ対策は大丈夫」
温浴施設の管理者からこのような声を聞くことがあります。中には「塩素で洗浄している」「塩素洗浄を毎日実施」と表現される方もいます。
しかし、これは大きな誤解です。「消毒」と「洗浄」は全く別のものであり、塩素による消毒だけではレジオネラ対策として不十分なのです。
厚生労働省も明確に指摘しています。「浴槽水を単に塩素剤等で消毒すれば良いというものではなく、生物膜の除去を行うことが必要」と。
本記事では、千葉県の温浴施設、スーパー銭湯、スポーツジム、介護施設、ゴルフ場などの管理者に向けて、消毒と洗浄の違い、そしてなぜ両方が必要なのかを詳しく解説します。
「消毒」と「洗浄」は全く別のもの
多くの温浴施設で、消毒と洗浄が混同されています。まずはこの2つの違いを明確にしましょう。
消毒とは
消毒とは、塩素などの薬剤を使って微生物を殺菌することです。温浴施設では、浴槽水に塩素系消毒剤を投入し、遊離残留塩素濃度を0.4mg/L以上に保つことが義務付けられています。
消毒の目的
- 浴槽水中に浮遊するレジオネラ属菌などの微生物を殺菌する
- 浴槽水を清浄な状態に保つ
- 利用者間での感染を防ぐ
消毒の方法
- 次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系消毒剤を投入
- 遊離残留塩素濃度を測定し、常に0.4mg/L以上を維持
- 自動塩素注入装置を使用するケースも多い
消毒は日常的に、継続的に実施する必要があります。浴槽水の状態を清浄に保つための基本的な対策です。
洗浄とは
洗浄とは、配管内壁やろ過器に付着した汚れや生物膜(バイオフィルム)を、物理的・化学的に除去することです。
洗浄の目的
- 配管内壁、ろ過器、貯湯槽などに付着した生物膜を除去する
- 生物膜内部で増殖しているレジオネラ属菌を根本から除去する
- レジオネラ菌の温床となる環境を排除する
洗浄の方法
- 高濃度の専門洗浄剤を循環システムに投入
- 配管全体に洗浄剤を循環させる(数時間)
- 生物膜を化学的に分解し、配管内壁から剥離させる
- すすぎ洗浄で剥離した汚れを完全に排出
洗浄は定期的に実施します。厚生労働省のマニュアルでは、週1回以上(毎日完全換水型)、または月1回以上(連日使用型)の配管洗浄が義務付けられています。
なぜ混同されるのか
消毒と洗浄が混同される主な理由は以下の通りです。
「塩素で洗う」という誤った表現 塩素消毒剤を浴槽水に投入する行為を、「塩素で洗う」「塩素洗浄」と表現してしまうケースがあります。しかし、塩素は殺菌するための消毒剤であり、洗浄剤ではありません。
専門知識の不足 温浴施設の管理者の中には、衛生管理の専門知識を持っていない方も少なくありません。消毒と洗浄の違いを正確に理解しないまま、日常業務を行っているケースもあります。
「洗浄」という言葉の日常的な意味 日常生活では、「洗う」という行為全般を「洗浄」と呼びます。このため、塩素を入れて「きれいにする」ことも「洗浄」だと誤解されやすいのです。
しかし、レジオネラ対策における「洗浄」は、配管内部の生物膜を物理的・化学的に除去する専門的な作業を指します。この違いを正確に理解することが、適切なレジオネラ対策の第一歩です。
厚生労働省の見解|塩素消毒だけでは不十分な理由
厚生労働省は、公式ホームページで以下のように明確に指摘しています。
「入浴施設では、充分に原湯又は循環ろ過水を供給することにより溢水させ、塩素消毒等で浴槽水を清浄に保つことが必要ですが、それだけで十分なレジオネラ症の防止対策とはなりません。」
「レジオネラ属菌の駆除には浴槽水を単に塩素剤等で消毒すれば良いというものではなく、常にその支持体となっている生物膜の発生を防止するための措置を行うこと、さらに生物膜を監視し、生物膜が形成されれば、その除去を行うことが必要です。」
この指摘は非常に重要です。厚生労働省が「塩素消毒だけでは不十分」と明言しているのです。では、なぜ塩素消毒だけでは不十分なのでしょうか。
生物膜(バイオフィルム)の形成
温浴施設の循環式浴槽では、以下のような場所に生物膜が形成されます。
- ろ過器のろ材表面
- 浴槽の内壁
- 循環配管の内壁
- 配管の継ぎ手部分
- 貯湯槽の底部と内壁
厚生労働省の説明によれば、「常に入浴者の体表等に由来する有機物質が補給されているので、これらを栄養源として増殖する微生物が侵入すると」生物膜が形成されます。
入浴者の皮脂、汗、化粧品、石鹸成分などの有機物が、微生物の栄養源となり、配管内壁などに定着して増殖し、生物膜を作るのです。
生物膜がレジオネラ菌を保護するメカニズム
生物膜の最も危険な特徴は、内部のレジオネラ属菌を「保護する」ことです。
厚生労働省はこう説明しています。「レジオネラ属菌などの病原微生物も生物膜の内部で増殖し、しかも外界からの不利な条件(塩素剤等の殺菌剤)から保護されています。」
つまり、生物膜というバリアに守られたレジオネラ属菌は、浴槽水中の塩素消毒剤の影響を受けないのです。塩素は生物膜の表面までは到達しますが、内部まで浸透できません。
さらに厚生労働省は、「レジオネラ属菌が宿主とするアメーバには、殺菌剤の負荷をかけると栄養体形からシストを形成し、抵抗性を示すようになるものもある」と指摘しています。
アメーバがシストという休眠状態の殻を作ることで、さらに殺菌剤への抵抗性が増すのです。
溢水と塩素消毒だけでは不十分
厚生労働省は、「充分に原湯又は循環ろ過水を供給することにより溢水させ、塩素消毒等で浴槽水を清浄に保つことが必要」としています。これは日常的に実施すべき基本的な対策です。
しかし、それに続けて「それだけで十分なレジオネラ症の防止対策とはなりません」と明言しています。
なぜなら、浴槽水をいくら消毒しても、配管内部やろ過器の生物膜に守られたレジオネラ属菌は除去できないからです。生物膜から浴槽水へレジオネラ属菌が供給され続ける限り、根本的な解決にはなりません。
生物膜の除去が必須
厚生労働省の結論は明確です。「常にその支持体となっている生物膜の発生を防止するための措置を行うこと、さらに生物膜を監視し、生物膜が形成されれば、その除去を行うことが必要です。」
レジオネラ対策の本質は、生物膜の除去にあります。塩素消毒は浴槽水を清浄に保つために必要ですが、それだけでは不十分です。定期的な配管洗浄により、生物膜を物理的・化学的に除去することが必須なのです。
正しいレジオネラ対策|消毒と洗浄の両立
厚生労働省が指摘するように、レジオネラ対策には消毒と洗浄の両方が必要です。それぞれの役割を正しく理解し、両立させることが重要です。
日常的な消毒(毎日実施)
目的: 浴槽水を清浄に保ち、浮遊するレジオネラ属菌を殺菌する
実施内容
- 浴槽水の塩素濃度管理(遊離残留塩素0.4mg/L以上)
- 塩素濃度の定期的な測定と記録
- 自動塩素注入装置の動作確認
- 浴槽の毎日の清掃と消毒
日常的な消毒は、浴槽水中に浮遊する菌を殺菌し、利用者間での感染を防ぐために不可欠です。しかし、これだけでは配管内部の生物膜には届きません。
定期的な洗浄(週1回〜月1回)
目的: 配管内部やろ過器の生物膜を除去し、レジオネラ菌の温床を根本から排除する
実施内容
- 高濃度洗浄剤を循環システムに投入
- 配管全体に洗浄剤を循環させる(数時間)
- 生物膜を化学的に分解し、配管内壁から剥離
- すすぎ洗浄で除去した汚れを完全に排出
- 消毒処理で仕上げ
厚生労働省のマニュアルでは、週1回以上(毎日完全換水型)、または月1回以上(連日使用型)の配管洗浄が義務付けられています。
両方が揃って初めて万全
消毒と洗浄、どちらか一方だけでは不十分です。
消毒だけの場合 浴槽水中の浮遊菌は殺菌できますが、生物膜に守られたレジオネラ属菌は除去できません。生物膜から浴槽水へ菌が供給され続けるため、根本的な解決にはなりません。
洗浄だけの場合 配管内部の生物膜は除去できますが、日々の浴槽水の衛生管理ができません。新たに侵入する菌への対応ができず、利用者間での感染リスクが高まります。
両方を実施することで
- 日常的な消毒で浴槽水を清浄に保つ
- 定期的な洗浄で生物膜を除去し、レジオネラ菌の温床を排除
- 両方が組み合わさることで、万全なレジオネラ対策が実現
これこそが、厚生労働省が求める正しいレジオネラ対策です。
「塩素洗浄」という表現は誤り
改めて強調しますが、「塩素洗浄」という表現は誤りです。
塩素は消毒剤であり、洗浄剤ではありません。正確には以下のように表現すべきです。
- 塩素消毒: 浴槽水に塩素を投入して殺菌すること
- 配管洗浄: 高濃度洗浄剤を使って配管内部の生物膜を除去すること
言葉の使い方を正確にすることで、消毒と洗浄の違いへの理解が深まり、適切なレジオネラ対策につながります。
まとめ|消毒と洗浄を正しく理解しレジオネラ対策を万全に
消毒と洗浄は全く別のものです。塩素による消毒は、浴槽水中の浮遊菌を殺菌するために必要ですが、配管内部の生物膜には届きません。
厚生労働省が明確に指摘しているように、「浴槽水を単に塩素剤等で消毒すれば良いというものではなく、生物膜の除去を行うことが必要」なのです。
生物膜は、レジオネラ属菌を外界の不利な条件(塩素などの殺菌剤)から保護します。この生物膜を除去するには、定期的な配管洗浄が必須です。
正しいレジオネラ対策とは、日常的な塩素消毒と定期的な配管洗浄の両立です。どちらか一方だけでは不十分であり、両方を実施することで初めて万全な対策となります。
千葉県の温浴施設、スーパー銭湯、スポーツジム、介護施設、ゴルフ場などの管理者の皆様、消毒と洗浄を正しく理解し、適切なレジオネラ対策を実施してください。
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