「うちは掛け流しだから、レジオネラの心配はない」
温浴施設の管理者からこのような声を聞くことがありますが、これは大きな誤解です。確かに循環式浴槽の方がレジオネラリスクは高いのですが、掛け流し式浴槽でも決して安全ではありません。
専門家による調査では、循環式浴槽からレジオネラ属菌が検出された割合は38%、一方で掛け流し式浴槽でも27%から検出されています。この数字が示すのは、「掛け流しなら安全」という考えが誤りであり、どちらの方式でも適切なレジオネラ対策が必要だということです。
本記事では、千葉県内の温浴施設、スーパー銭湯、スポーツジム、介護施設、ゴルフ場などの管理者に向けて、循環式浴槽と掛け流し式浴槽それぞれの仕組み、レジオネラリスク、そして必要な対策を詳しく解説します。
循環式浴槽とレジオネラリスク
循環式浴槽でレジオネラ菌が発生しやすい理由
循環式浴槽では、浴槽水をろ過器に通して浄化し、再び浴槽へ戻す仕組みを採用しています。この水の循環・再利用により、以下のようなレジオネラリスクが高まります。
水が循環することで汚染が広がる 循環システムでは、浴槽水中の汚染物質や細菌が配管、ろ過器、熱交換器など、システム全体に広がります。一箇所でレジオネラ属菌が増殖すると、循環を通じて浴槽水全体に供給され続けることになります。
配管内壁・ろ過器内部にバイオフィルムが形成 入浴者の皮脂、汗、化粧品などの有機物が配管内壁やろ過器表面に付着し、これが栄養源となってバイオフィルム(生物膜)が形成されます。このバイオフィルムは、レジオネラ属菌が増殖するための理想的な環境を提供します。
最適な温度環境 浴槽水は通常36℃〜42℃程度に保たれており、これはレジオネラ属菌の増殖に最適な温度範囲です。特に36℃前後では菌が最も活発に増殖します。
塩素消毒が届かない箇所が多数存在 バイオフィルムに守られたレジオネラ属菌は、通常の塩素消毒では除去できません。さらに、連通管、水位計配管、デッドエンドなど、水流が起こらない箇所では塩素が到達せず、菌が保護された状態で増殖し続けます。
循環式浴槽でのレジオネラ属菌検出率
専門家による調査では、**循環式浴槽からレジオネラ属菌が検出された割合は38%**という結果が出ています。これは約4割の循環式浴槽でレジオネラ汚染が確認されたことを意味します。
この高い検出率の背景には、以下の要因があります。
- 配管やろ過器内部のバイオフィルム蓄積
- バイオフィルム内でのレジオネラ属菌の急速な増殖(通常の100〜1000倍の速度)
- 日常的な塩素管理だけでは不十分
- 配管洗浄が適切に実施されていない施設が多い
なぜ配管洗浄が必須なのか
循環式浴槽では、浴槽水だけを消毒しても、配管内部やろ過器に形成されたバイオフィルムは除去できません。バイオフィルムに守られたレジオネラ属菌は、消毒剤の影響を受けずに生き続け、循環水を通じて浴槽水へ供給され続けます。
そのため、循環式浴槽では以下の対策が必須となります。
- ろ過循環配管洗浄: 配管全体、ろ過器、熱交換器などを含めた徹底洗浄
- バイオフィルム除去: 高濃度洗浄剤による化学的分解と剥離
- 定期的な実施: 週1回または月1回以上の配管洗浄
- 水流が起こらない箇所への対応: 連通管、水位計配管などの個別洗浄
掛け流し式浴槽の仕組みと見落とされがちなリスク
掛け流し式浴槽の構造
掛け流し式浴槽は、常に新鮮な湯を供給し、オーバーフローで排出する方式です。浴槽水を循環させずに使用するため、「源泉掛け流し」として温泉施設で好まれる方式です。
掛け流し式のメリット
- 常に新鮮な湯が供給される
- 循環による汚染拡散のリスクが低い
- 温泉成分が薄まらない
- 「掛け流し」というブランドイメージ
- 利用者からの評価が高い
このようなメリットから、「掛け流しなら衛生的で安全」という印象を持たれがちです。しかし、実際にはそうとは言えません。
掛け流し式でもレジオネラが発生する理由
重要なデータ: 専門家による調査では、掛け流し式浴槽でも27%からレジオネラ属菌が検出されています。循環式の38%よりは低いものの、決して無視できない高い検出率です。
「掛け流しなら安全」という誤解から清掃が疎かになりがちですが、実際には掛け流し式にも以下のような危険箇所が存在します。
掛け流し式浴槽の危険箇所
①貯湯槽 温泉水や加温した湯を一時的に貯めるタンクです。底部に有機物や沈殿物が蓄積しやすく、温度が50℃〜60℃に保たれていても、底部は温度が下がりやすくレジオネラ属菌が増殖する可能性があります。
貯湯槽内部でバイオフィルムが形成されると、そこから配管を通じて浴槽にレジオネラ属菌が供給され続けることになります。
②源泉から浴槽までの配管 掛け流し式でも、源泉から浴槽まで配管で湯を運びます。この配管の内部にもバイオフィルムは形成されます。特に配管の曲がり部分や水流が弱い箇所では、バイオフィルムが蓄積しやすくなります。
③温度調節配管 源泉の温度が高すぎる場合、加水して適温にする配管があります。また、温度が低い場合は加温します。これらの温度調節のための配管も、水流が弱い箇所や停滞する箇所があり、バイオフィルム形成のリスクがあります。
④水位計配管 浴槽の水位を確認するための透明な管です。循環式浴槽と同様、掛け流し式でも水位計配管は水流がほとんどなく、バイオフィルムが形成されやすい危険箇所です。
⑤連通管 男湯と女湯をつなぐU字型の配管です。掛け流し式でも連通管が設置されている施設があり、この部分は水流がほとんど発生せず、汚れやバイオフィルムが蓄積しやすい箇所です。
⑥浴槽壁面(水位より少し上) 通常の水位線より数センチ上の浴槽壁面は、掛け流し式でも危険箇所です。水しぶきで湿気があり、有機物が付着しやすく、バイオフィルムが形成されやすい環境です。
厚生労働省の見解
厚生労働科学研究では、**「掛け流し温泉施設においても浴槽や貯湯槽、配管その他の設備の生物膜の除去がレジオネラ対策として最も重要」**と明記されています。
つまり、掛け流し式であっても循環式浴槽に準じた清掃・消毒が推奨されており、必要に応じて塩素系消毒剤による浴槽水の常時消毒も求められています。
「掛け流しなら安全」という誤解の危険性
検出率27%という事実は、掛け流し式でも約4施設に1施設でレジオネラ汚染が確認されていることを示しています。
「掛け流しだから大丈夫」という油断が、清掃・消毒の手抜きにつながり、結果的にレジオネラリスクを高めてしまうケースが少なくありません。掛け流し式でも、適切な配管洗浄とバイオフィルム除去が必須です。
循環式浴槽と掛け流し式|レジオネラ対策の違い
比較表で見る両方式の違い
循環式浴槽と掛け流し式浴槽を、レジオネラ対策の観点から比較すると以下のようになります。
| 項目 | 循環式浴槽 | 掛け流し式浴槽 |
|---|---|---|
| レジオネラ検出率 | 38% | 27% |
| 主な危険箇所 | 配管、ろ過器、連通管、水位計、デッドエンド、集毛器 | 貯湯槽、配管、連通管、水位計、温度調節配管 |
| 水の状態 | 循環・再利用 | 常時供給・排出 |
| バイオフィルム形成リスク | 高い | 中程度 |
| 汚染の広がり方 | 循環により全体に広がる | 貯湯槽・配管から供給 |
| 必要な対策頻度 | 高頻度(週1回〜月1回) | 中頻度(月1回以上) |
| 配管洗浄の必要性 | 必須 | 必須 |
| 塩素管理 | 常時必須(0.4mg/L以上) | 必要に応じて実施 |
共通して必要な対策
循環式でも掛け流し式でも、以下の対策は共通して必要です。
定期的な配管洗浄とバイオフィルム除去 どちらの方式でも、配管内部にバイオフィルムは形成されます。高濃度洗浄剤による化学的な分解と剥離が必須です。
水位計、連通管の清掃・消毒 水流が起こらない箇所は、どちらの方式でも存在します。これらの箇所への個別の対応が必要です。
貯湯槽の定期清掃 循環式でも掛け流し式でも、貯湯槽を使用している場合は年1回以上の開放清掃が必要です。
浴槽の毎日の清掃・消毒 営業終了後に浴槽を完全に排水し、壁面や底面を清掃・消毒します。
年1回以上の水質検査 レジオネラ属菌の検査を定期的に実施し、汚染状況を把握します。
循環式特有の対策
循環式浴槽では、さらに以下の対策が必要です。
- ろ過器の逆洗浄(毎日1回以上)
- 集毛器の毎日清掃
- 循環配管の週1回以上の消毒
- 気泡発生装置がある場合の強化管理(他の浴槽より高い塩素濃度)
掛け流し式特有の対策
掛け流し式浴槽では、以下の点に特に注意が必要です。
- 貯湯槽の温度管理(60℃以上推奨、レジオネラ属菌の増殖を抑制)
- 源泉配管の定期洗浄
- 「掛け流しだから安全」という油断の排除
- 温度調節配管の洗浄
どちらも配管洗浄が必須
循環式でも掛け流し式でも、配管内部にバイオフィルムは必ず形成されます。日常的な塩素管理や浴槽清掃だけでは不十分で、定期的な高濃度洗浄剤によるろ過循環配管洗浄とバイオフィルム除去が必要です。
「掛け流しだから配管洗浄は不要」という考えは誤りです。むしろ、掛け流しという安心感から管理が疎かになりがちな分、意識的に配管洗浄を実施する必要があります。
循環式でも掛け流し式でも|バイオフィルム除去が最重要課題
バイオフィルムはどちらでも形成される
バイオフィルム(生物膜)は、微生物が固体表面に付着して形成する生物膜です。水が流れる場所には必ず形成される可能性があり、浴槽の方式に関わらず発生します。
循環式浴槽でのバイオフィルム形成箇所
- 配管内壁
- ろ過器内部(ろ材表面)
- 熱交換器
- 集毛器
- 連通管、水位計配管
- デッドエンド配管
掛け流し式浴槽でのバイオフィルム形成箇所
- 貯湯槽底部と内壁
- 源泉配管内部
- 温度調節配管
- 連通管、水位計配管
- 浴槽への給湯配管
どちらの方式でも、水流が弱い箇所、停滞する箇所には必ずバイオフィルムが形成されます。
日常管理の限界
日常的な管理では、バイオフィルムを完全に除去することはできません。
塩素消毒の限界 浴槽水に塩素を投入しても、浮遊菌には有効ですが、バイオフィルム内部には到達しません。バイオフィルム内の細菌は、塩素に対して100倍以上の耐性を持ちます。
浴槽清掃の限界 毎日の浴槽清掃は表面的な汚れを除去できますが、配管内部やろ過器内部、貯湯槽内部などは直接清掃できません。
水質検査の限界 水質検査はレジオネラ属菌の検出はできますが、菌の除去はできません。検出された場合は、配管洗浄などの対策が別途必要です。
専門的な配管洗浄の必要性
バイオフィルムを確実に除去するには、専門的な配管洗浄が必要です。
高濃度洗浄剤によるバイオフィルム分解 バイオフィルムの細胞外多糖(EPS)を化学的に分解し、内部構造を破壊します。
配管内壁からの剥離 分解されたバイオフィルムを配管内壁から物理的・化学的に剥がし取ります。
レジオネラ属菌の徹底殺菌 バイオフィルムが除去されることで、保護されていたレジオネラ属菌が露出し、殺菌剤が直接作用します。
循環式でも掛け流し式でも同様に必要 配管洗浄とバイオフィルム除去は、浴槽の方式に関わらず必須の対策です。
「掛け流しなら安全」という誤解の危険性
改めて強調しますが、掛け流し式浴槽でも27%からレジオネラ属菌が検出されています。これは決して低い数字ではありません。
「掛け流しだから配管洗浄は不要」「掛け流しだから塩素管理は不要」という考えが、結果的にレジオネラリスクを高めてしまいます。掛け流し式でも、循環式に準じた清掃・消毒、配管洗浄、バイオフィルム除去が必要です。
当店の掛け流し式浴槽への対応
当店の循環配管洗浄は掛け流し式浴槽にも対応しています。
掛け流し式浴槽での洗浄内容
- 貯湯槽の洗浄・消毒
- 源泉配管から浴槽までの配管洗浄
- 温度調節配管の洗浄
- 連通管、水位計配管の洗浄
- バイオフィルム除去に特化した洗浄剤使用
- 必要に応じて貯湯槽の開放清掃
掛け流し式でも効果的な洗浄
当社の洗浄剤は、循環式に限らず、掛け流し式の配管や貯湯槽にも有効です。バイオフィルムを化学的に分解し、配管内壁や貯湯槽内壁から剥離させることで、レジオネラ属菌の温床を根本から除去します。
まずは無料診断から
「うちの施設は循環式?掛け流し?」「どのくらいの頻度で洗浄が必要?」など、疑問がある方も多いと思います。
当社では、施設の方式とリスクを無料で診断し、最適な対策をご提案しています。お見積もりも無料で提示いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|方式に関わらずレジオネラ対策は必須
循環式浴槽は38%、掛け流し式浴槽でも27%からレジオネラ属菌が検出されています。「掛け流しなら安全」は誤解であり、どちらの方式でもバイオフィルム除去が必須です。
配管、貯湯槽、連通管、水位計など、水流が弱い箇所や停滞する箇所は、循環式でも掛け流し式でも存在します。これらの箇所にはバイオフィルムが形成され、レジオネラ属菌の温床となります。
日常的な塩素管理や浴槽清掃だけでは不十分です。定期的なろ過循環配管洗浄により、バイオフィルムを化学的に分解し、配管内壁から剥離させることが、唯一の根本的な解決策です。
千葉県内のスーパー銭湯、スポーツジム、介護施設、ゴルフ場などの温浴施設事業者様、循環式でも掛け流し式でも、当社の配管洗浄サービスにご相談ください。まずは無料診断で、施設の方式とリスクを正確に把握し、最適なレジオネラ対策を始めましょう。
利用者の安全を守り、施設の信頼を維持するために、方式に関わらず適切なレジオネラ対策を
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